2016年7月28日木曜日

「司書の書誌」第34回 司書の対象

これまで長い間、「紙」で発行・提供されて来た官公庁の白書・統計・報告書類ですが、近年、発行主体の所管官庁のホームページ上で、同時に電子ファイル(主に、PDF)も提供されることが通例となってきています。

一方、これまで多くの図書館では、物理的な実体のあるもの、つまり、冊子体、もしくは、CD-ROMにパッケージされている資料のみを収集・保存・提供の対象とし、インターネット上にあるファイルの方は、事実上、無視してきたように思います。

しかし、最近、(不況の影響もあってか)当初から、まったく紙媒体での資料を発行せず、電子ファイルのみをホームページで提供するという事例が出てきています。
いわゆる、「ボーン・デジタル(Born-digital)」資料です。

ボーン・デジタル資料は、インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも、同時に何人もが利用でき、さらに、手元に原本を保存しておけるという、紙媒体にはない長所がいくつもあります。
一方で、図書館サイドから見ると、物理的な実体のある資料を前提に構築されてきたこれまでの業務システムに、根本的な再構築を促されています。

まず、収集はどうするのか。

資料(ファイル)のありか(URL、リンク情報)だけを集めておくのか、または、ファイル自体を図書館が所管するサーバに保存するのか。その場合、すべての提供元に許諾をとる必要があるのか。
仮に、ファイルを収集したとして、これまで冊子体を前提とした図書館システムで、どのように目録をとり、資料を管理していくのか。OPACでヒットした場合、直接、ファイルを開くような仕組みが必要か、それ以前に、それらのファイルを「所蔵資料」として扱ってよいのか。発行元でファイルの更新があった場合、どのような対応を採るか。
いろいろ、疑問点が出てきます。

一方、ファイル自体ではなく、プリント・アウトしたものを製本して管理するという方法も考えられますが、元々、紙媒体が存在していない資料に対し、図書館が「勝手に」そのような資料を作成し、利用者に提供してよいのかという疑問もあります。

そして、もし、そのようなことが可能だったとしても、今後、ボーン・デジタルが中心になった場合、全ての資料をプリント・アウトすることは不可能なので、どの範囲をプリント・アウトするのか、という選択も迫られると思います。

そう考えると、館内で(専用の)閲覧端末を用意するのが現実的と思われますが、冊子体と違い、その端末1台で、いくつもの資料を見ることができるという利点の反面、設置台数以上の閲覧希望があった場合は、まったくそれらの資料を利用することができない利用者も出てきてしまうという難点もあります。

官公庁の資料以外でも、著名な作家の個人全集が電子版でしか出版されないという事例が、実際、出てきています。
ボーン・デジタルに限らず電子資料は、かなり世の中にも浸透してきていますし、NDLでの収集も始まっています。

これらの資料を図書館で受入れるコトになった場合に、どのように目録をとり、管理し、提供していくのか。
冒頭に書いたような、特に公官庁の資料については、閲覧機器を持たなかったり、使えなかったりするヒト達にも、平等に提供する必要があります。
それぞれの図書館での対応を本格的に検討する時期にきているのではないでしょうか。

2016年7月21日木曜日

「司書の書誌」第33回 司書の自衛

先日、図書館の利用者が、ナイフで職員や他の利用者にケガを負わせ、逮捕されるという事件がありました。

報道によると、「住んでいる自治体が違うため、本の貸出ができない」という職員の説明に怒り出し、ナイフを取り出したとのコトです。

図書館には、他にもこの手の「決まり」は多くありますし、図書館サイドとしては、もちろん、それなりの理由がありますが、一方の利用者からすると、確かに、納得できないコトも多々あるとは思います。

また、決まり自体は(スグには)どうしようもないとして、それ以外でも、図書館側の説明の仕方や、対応がチグハグだったりという場合もあるとは思います。

ただ、だからといってこういった事件が起こると、やはり、非常に怖いです。
残念ながら、多くの方のイメージとは違い、図書館は安心・安全な場所とは、必ずしも言い切れなくなってきています。

そもそも、図書館は銀行等と違い、カウンタ内部への利用者の侵入を想定していないので、オープンになっているトコロが多いと思います。

さらに、ある程度の規模で、カウンタに複数の職員がいる図書館ばかりではなく、小さい町の図書室等では、女性の職員さんがひとりで対応されているトコロもあります。
また、対職員だけでなく、利用者同士のトラブルも考えられます。

そういった、制度・設備面で事前の対応が可能なコトはたくさんあると思います。

今回は、たまたま図書館で起こっただけという考え方もできますが、そういうコトが起こるかもしれないという前提で心構えや準備しておくコトは、とても大切です。

そして、さらに残念なコトですが、「図書館がテロの対象になったら?」という想定を真剣にしなくてはならなくなってきていると、個人的には思っています。

2016年7月14日木曜日

「司書の書誌」第32回 司書の物量

今年度から新しい部署になり、毎日、市町村の図書館等に本を持って行ったり、それぞれの図書館間の本のやりとりを中継したり、また、市町村支援用の蔵書を一括で大量に貸し出す担当になりました。

で、その部署になり、つくづく感じるのは、日々の本の運搬ももちろん、一括貸出の際は、何百冊、時には、千冊単位の本をクルマに乗せるので、まぁ、とにかく……本が重いのです(笑)。

さらに、こちらに借りに来られる市町村からの職員さん達は、基本的に女性が多いのですが、ボクが持ってもなかなか持ち上がらないようなダンボール詰めの本を持って帰り、今度は、自分の図書館でも同じだけの本を運ばなくてはならないので、本当に大変だと思います。

個人でも、本を持ちすぎて、家の床が抜けたとか、場合によっては、家が倒壊したなんてハナシも実しやかに囁かれたりしますが(汗)、そんなハナシが真に迫る程、本は実に重たい。
個人で本を読んでいる時には、程よい重さに感じられますが、これがいったん、ダンボール単位になると、途端に凶器になります(笑)。

音楽映像の場合、コンテンツ再生機分離が早くから行われていましたが(カセットCD等)、本の場合、いわばコンテンツごとに、そのコンテンツに応じた、そのコンテンツのためだけの再生機がついている状態なので、そりゃ、重たくもなります。
最近、漸く電子書籍が普及し始めましたが、本来、音楽や映像なんかに比べて格段にデータ量が少ない文字の方の分離がこれほどまでに遅れたのは、まぁ、それなりの理由があるのだとは思いますが……

先日、同じ課の方とお話していると、本が売れない理由のひとつとして、やはり、本は場所をとるからで、たとえば、本屋さんに読み終わった本を持って行き、それを(場合によっては安価な有償で)引き取ってもらえれば、その場で、新しい本も買いやすいのにとおっしゃっていました。

最近、断捨離ミニマリストの流れで、とにかく、モノを持ちたくない、家にモノを置きたくないという方が増えていると思います。

つまり、そんなマインドが、本の購入を躊躇させているのではないかというハナシ。
もちろん、新古書店等に持っていけばいいわけですが、そこからまた、新刊書店に行くのは面倒くさいというのもありますし、確かに、ひとつのアイディアかもしれません。

少し前までや、場合によってはの象徴ですらあったかもしれない物理的な本ですが、そこにこそ価値を見いだし、それゆえに本を愛する方が多いのも事実ではあるモノの、ここでも何度か取り上げている、図書館の書庫スーペスの問題等も含め、少し、これまでとは違う段階にきているのかなと思ったりします。

図書館の種類にもよるとは思いますが、「コンテンツさえ、ちゃんと読めればよい」という利用者の方が圧倒的に多いと思いますし、そうであるなら、それに応じたコンテンツの提供方法もあると思うのですが……

2016年7月7日木曜日

「司書の書誌」第31回 司書の整頓

図書館業務の中でも、特に地味なので気づかれにくいのに、それに反比例するかのように重要な作業として、本を、本来あるべき場所に戻す「返本作業」「配列点検」、また、「書架整理(整頓)等とも呼ばれる作業があります。

大抵、本の背表紙に貼られている「請求記号ラベル」の中にある、(図書館によっては)非常に細かい数字記号を確認しつつ、事前に決められた配列規則にのっとり、間違いのないように本を順番どおりに戻したり、並べ直していくのは、非常に根気集中力が必要な作業です。

しかし、これを怠り、本来とは少しでも違った場所に本があるだけで、とたんに本が見つけにくくなりますし、いわんや、全く別の書架に本が行ってしまうと、極端に言えば、館内にあっても、2度とその本が見つからなくなる可能性もあります(実際には、そのためにも、大抵、年に1回行われる「蔵書点検」の際に徹底的に探すのですが)。

特に、利用者が直接アクセスできる開架の書架は、利用が多いがゆえに、本来、あるべき場所に本がなくてはならないのに、同じく、利用の多さゆえ、(意図的でなくても)利用者が本来の場所ではないトコロに本を戻すことも多く、常にメンテナンスが必要というコトになります。

で、この「書架整理」ですが、作業自体は単純なモノの、正確にやろうと思うと、非常に労力がかかります。
こういう作業こそ、どうにか機械化できないかと考えるのが人間の常ですが(笑)、先日、こんな記事がありました。

図書館の書棚管理から司書を解放するロボット--夜間に自律走行して本棚をチェック - CNET Japan

確かに、便利なのかもしれませんが、記事を読む限り、さすがに、間違っていた時に、正しい位置にロボットが本を直してくれる訳ではなさそうです(笑)。

前から、どうにかして書架整理の労力を減らせるいいアイディアがないかと考えているのですが、おぼろげながら、正解は、もっとアナログで、ほっておいても、自然と直っていく手法のような気がしています。

どこかに書いたのですが、たとえば、ジャンプコミック『ドラゴンボール』って、つい、順番どおりに並べたくなりますよね?(笑)
あんなイメージ。

ただ、図書館の本は、後から列の間に新しい本が入ったり、貸出等でしょっちゅう抜けたりしますよね。

う〜む……(苦悩)